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ファクタリングに登記は必要?登記の申請と流れを解説

ファクタリングについて調べていると、「登記」という言葉がよく出てきます。

記事によってはファクタリングには登記が必須と書いてあるものもあり、ファクタリングを考える上で登記という単語は避けては通れない単語のようです。

そこでここでは登記について詳しく解説するとともに、登記とファクタリングの関係や、登記の流れについてまとめました。

登記とは

登記とは

まずはなにより登記についての知識を持っておきましょう。

一口に登記と言っても、いろいろな種類があります。
それぞれの登記の役目、そして登記そのものの持つ意味を確認しておきましょう。

登記の持つ意味

登記という行為の持つ意味を簡単にいうと「ある物やある権利に関する事項を、社会的に公示することで、その権利関係や義務を保護する」ことを目的とした制度です。

つまり、ある物や権利に関する所有権をハッキリさせるもので、登記が行われた情報は、第三者も確認することができます。
「この権利はこの人のものです」、「この不動産は誰が持っているものです」ということを、広く知らしめることができるシステムと考えれば大きく間違ってはいません。

登記の種類

登記には様々な種類があるので、まずは代表的な登記の種類を紹介しておきましょう。

不動産登記 不動産(土地及び建物)の物理的現況と権利関係を公示する
商業登記 営利企業の一定の事項に関して公示する
法人登記 一般社団法人や一般財団法人に関して公示する
動産譲渡登記 企業が持つ自動車や設備、在庫などの譲渡に関して公示する
債権譲渡登記 法人間の債権譲渡に関して公示する

この他にも船舶登記各種財団登記などがあり、不動産登記の中には表題登記、変更登記、更生登記など多数の登記が存在しています。

ファクタリング契約時に出てくる登記とは、この中の「債権譲渡登記」というものです。

債権譲渡登記とは

債権譲渡登記とは

ではファクタリングに関係する債権譲渡登記について詳しく解説していきます。

そしてファクタリングを利用する際、登記が必須と言われる理由や、登記を行うことによって生じるメリット・デメリットも同時に考えていきます。

債権の所有権を確定させる

企業間で債権が譲渡された時、その債権が何月何日にどの会社からどの会社に譲られたかを証明するのが債権譲渡登記です。

この登記により、第三者に対する対抗要件を備えることになります。

対抗要件とは?

ファクタリングでいう対抗要件とは、権利の変動があった際、当事者以外の第三者に対してその権利が誰にあるのかを主張するための法律的な要件のことです。

簡単にいうと、「この権利は〇月△日にA社からB社に譲渡されました」という事実を公示することにより、第三者がその権利に関して主張できなくするということになります。

ファクタリングで債務譲渡登記を行う理由

ではファクタリングの契約において、債権譲渡登記を行う必要があるのはどのような理由があるからなのでしょうか。

元々ファクタリングには、3社間ファクタリングしかなく、2社間ファクタリングというものは存在しませんでした。
これは、売掛先も含めて契約をすることで、その売掛債権の譲渡が行われたことを2社間のみではなく第三者である売掛先にも確認してもらうためという側面があったためです。

しかし、その後債権の譲渡を登記することを条件に2社間のファクタリングも可能になりました。
ファクタリング会社としては事故防止のため、その売掛債権を現在誰が保有しているのかをハッキリさせることが非常に重要なのです。

言い換えると、債務譲渡登記はファクタリング会社の防衛策のひとつということになります。
ファクタリング会社にファクタリング契約を申し込んできた会社が、同じ債権を複数のファクタリング会社に譲渡することを防ぐための対策となっています。

ファクタリングの契約にあたって、債権譲渡登記を行っておけば二重譲渡を防ぐことができます。

ファクタリング契約で債権譲渡登記を行うメリット

ファクタリング会社にとっては、上でも触れた通り二重譲渡という詐欺行為に遭わないことが最大のメリットとなります。

売掛債権の二重譲渡、多重譲渡自体が違法ではありますが、もしこういった違法行為に巻き込まれるとファクタリング会社にとっては大きな損失になります。
さらにいえば登記をすることで、すでにその債権が他の誰かに渡っていないかどうかを確認することもできるのです。

ファクタリングを利用しようとしている会社にとっては大きなメリットはありませんが、債権譲渡登記なしのファクタリング契約は手数料が高額になることがあるので、手数料を抑えるという点ではメリットといえるでしょう。

ファクタリング契約で債権譲渡登記を行うデメリット

債権譲渡登記を行うデメリットは、ファクタリング会社にはないと言っても過言ではありません。
登記をすることで多重譲渡を防ぐことが可能であり、登記にかかる費用はファクタリングを希望してきた会社に持ってもらえばよいので、何のリスクもありません。

ファクタリングを利用したい会社にとっては、いくつかのデメリットが存在します。
登記を行うということは、公示されるということ、つまり、債権を譲渡したことが第三者に伝わってしまいます。

この公示によっておこるデメリットは、まず会社の信用問題です。
債権譲渡は違法行為ではありませんが、その会社と取引を考えている企業にとっては、「経営状態が順調ではないのでは?」という印象を与える可能性があります。
ファクタリングの目的は、入金予定の金額を手数料を支払ってでも早く手にするということなので、印象としてはあまり良くありません。

悪い印象を持つのは取引先企業だけではありません。
もしファクタリングをした会社が、後に銀行などに融資を申し込んだ場合も良い印象を与えません。

銀行などの金融機関が融資の審査を行う場合、その会社の登記に関してはきっちりと調査を行います。
ファクタリングをしたことがあること自体は融資に影響はないとしても、やはり取引先同様「経営がうまくいっていないのでは?」というネガティブな印象を与えることは間違いないでしょう。

近く銀行融資を考えている企業は、ファクタリングの利用には慎重になった方がいいというのが正直なところです。

登記申請方法とその流れ

登記申請方法とその流れ

では登記申請の方法と流れを確認しておきましょう。

とはいえ多くの場合、登記の申請はファクタリング会社が代行してくれるので、申し込む会社は必要な書類を準備するだけといってもよいでしょう。

登記申請登録の流れ

登記の申請手続きは難しいことではありません。

登記申請書や委任状を用意し、そこに申し込み会社、ファクタリング会社の双方が署名と実印の押印をし、その書類に印鑑証明登録証を添えて申し込めばOKです。

ファクタリング会社の多くが東京近郊にある理由

登記の申し込みに関して、ひとつ難点があるとすればそれは登記を行う窓口の数です。

実は債権譲渡登記の窓口は、日本全国で1か所しかありません。

その窓口が設置されているのが、東京都中野区にある法務局です。

つまりどのファクタリング会社も、登記の申請を行うためには中野区まで行かなければならないということになります。
そのためファクタリング会社の多くは東京近郊に集中しており、地方都市に本社を構えるファクタリング会社でも、東京に事務所を置いている会社がほとんどということになっています。

そもそもファクタリング契約を申し込むのは、「早急に売掛債権を現金化したい」という顧客がほとんどなので、その契約に必須となっている登記申請に時間がかかるのは大きな問題になります。

このファクタリングというシステムが社会的にさらに広がりを見せるようであれば、登記窓口は今後増えていくと予想されますが、今のところ1か所しかない状況に対応するしかありません。

債権譲渡登記に必要な費用

債権譲渡登記は無料ではできません。
実際の登記事務は司法書士などが行うので、司法書士に対する報酬がまず必要になります。さらに登記には登録免許税という税金がかけられるため、この税金も必要になります。

登録免許税は、譲渡する債権の個数が5,000個未満の場合7,500円、5,000個以上の場合15,000円と定められています。司法書士への報酬は、司法書士によって幅はありますが、およそ3~5万円程度が相場といわれています。

これらを勘案すると、40,000~70,000円程度の費用が必要となります。

まとめ

ファクタリング契約を結ぶ際は、債権譲渡登記が条件となっているケースがほとんどです。
この債権譲渡登記は、ファクタリング会社が債権の多重譲渡を防ぐための防衛策であり、ファクタリング会社にとってはメリットが大きい条件といえます。

しかし債権譲渡登記を行うと、ファクタリングを申し込んだ会社にとっては、取引先や融資を考えている銀行にファクタリングを行ったという事実を知られてしまうというデメリットがあるため、この債権譲渡登記なしでの契約を望む会社も少なくありません。

ファクタリング会社の中には債権譲渡登記なしでのファクタリング契約を行っている会社もありますが、登記なしの場合、ファクタリング契約の手数料が高額になる場合がほとんどです。

ファクタリングを申し込む場合は、その手数料の差と登記をされることで起こり得るデメリットを天秤にかけて、どちらが自分の会社にとってプラスになるか見極めて申し込む必要があります。
また、近い将来銀行融資の申し込みを考えている会社などの場合、ファクタリングを行ったことが銀行に伝わった場合のリスクも想定してから申し込む必要があるでしょう。

ファクタリング自体は非常に便利なシステムですが、利用すればそれなりのリスクも存在するということは覚えておきましょう。